Webデザインにおける「UX(ユーザーエクスペリエンス)」とは、単なる見た目の美しさではなく、ユーザーがどのように感じ、行動するかを設計することです。
しかし「良い体験をつくる」と言っても、抽象的で見えにくいのが現実。
そこで大切なのが、UXを“可視化”する3つの手法です。
目次
UXを可視化する3つの手法とは?
UXを設計するうえで欠かせないのが以下の3つ。
- ペルソナ(Persona)
- カスタマージャーニーマップ(Customer Journey Map)
- ユーザーシナリオ(User Scenario)
これらを使うことで、
- ユーザー視点で意思決定できる
- チーム全体で共通の認識を持てる
- ユーザーの共感ポイントを明確にできる
といった効果が得られます。
つまり、UXの設計を「見える化」することで、チーム全体で“誰のために、どんな体験をつくるか”を共有できるのです。
1. ペルソナ:ユーザー視点を明確にする
ペルソナとは、ターゲットユーザーを具体的な人物像として描いた仮想ユーザーのこと。
「30代女性・都内在住・フリーランスデザイナー」のように、属性や価値観を具体化していくことで、ユーザーの気持ちに寄り添った設計が可能になります。
ペルソナの作り方
手順 | 内容 |
---|---|
① 設定項目を考える | 名前、年齢、性別、居住地、仕事(内容・役職)、 生活パターン、価値観、趣味、 利用デバイスなどを洗い出す |
② ターゲット情報を集める | アンケート・SNS・レビューなどからデータ収集 |
③ データを分類する | 共通点や特徴でグルーピング |
④ ペルソナ化する | 一人の“象徴的なユーザー”を設定して プロフィール化する |
ペルソナをつくることで、デザイナーや開発者が「自分の主観」で判断するのではなく、“その人ならどう感じるか”というユーザー視点で意思決定できるようになります。
例えばこんな感じに
1. 名前: 立花綾乃(仮名)
2. 年齢: 24歳
3. 性別: 女性
4. 居住地: 東京都中野区
5. 職業: 新卒で入社したIT企業の営業職
6. 年収: 約350万円
7. 学歴: 私立大学卒業(経済学部)
8. ライフスタイル:
– 一人暮らしで、友人を招いてのホームパーティーが好き
– 料理を趣味としていて、特にアジア料理や鍋料理をよく作る
– 健康志向で、食材には気を使う
9. 趣味:
– 料理教室に通うこと
– 旅行(特に食文化を学ぶことが好き)
– カフェ巡りや新しいレストランの開拓
10. 家族構成: 両親と妹がいるが、現在は独立して一人暮らし
11. 価値観:
– 価格に対してのコストパフォーマンスを重視している
– サステナブルな生活に興味があり、エコフレンドリーな製品に好感を持つ
12. 購買行動:
– SNSやブログでのレビューを参考にする
– ショッピングは主にネットで行い、特に割引やキャンペーン情報に敏感
– 購入前に商品を実際に手に取ることを重要視しているが、時間がないためオンラインショッピングを利用することが多い
13. 悩み:
– 鍋のセットは高価なため、コストパフォーマンスが良いものを探しているが、どれが本当に価値があるのか決めかねている
– 使い勝手が良く、お手入れが楽な製品を求めているが、選択肢が多すぎて迷っている
14. 目標:
– 友人を招いての料理を楽しむために、質の高い鍋セットを手に入れたい
– 購入を通じて、日常の料理をより楽しく、クオリティを高めたいと思っている
このようにペルソナを具体的にすることで、彼女に向けたマーケティング戦略や製品の提案がしやすくなります。
2. カスタマージャーニーマップ:体験の流れを整理する
ペルソナが“誰”を明確にするものだとすれば、カスタマージャーニーマップは“その人がどんな体験をするか”を可視化するものです。
たとえば、ユーザーが商品を知り、比較し、購入し、リピートするまでの流れを時系列で整理し、各段階での感情・行動・課題を把握します。
カスタマージャーニーマップの例
フェーズ | ユーザーの行動 | 感情 | 接点(タッチポイント) | 改善のヒント |
---|---|---|---|---|
認知 | SNSで商品広告を見る | 興味を持つ | Instagram広告、口コミ | ビジュアルとコピーで印象を強く |
比較 | 公式サイトやレビューを確認 | 期待と不安 | Webサイト、YouTubeレビュー | FAQや口コミの充実 |
購入 | ECサイトで商品を購入 | 安心・満足 | Amazon、公式EC | 決済UIのシンプル化 |
利用 | 実際に使ってみる | 喜び/戸惑い | 開封体験、使い勝手 | 同梱ガイドやチュートリアル |
継続/共有 | SNSで感想を投稿 | 満足・誇り | Instagram、LINE | ユーザー投稿キャンペーン |
作成時のポイント
- ペルソナの行動を仮説として組み立てる
- ユーザーと商品・サービスの接点を明確にする
- 「どんな感情で次の行動に移るか」を丁寧に描く
3. ユーザーシナリオ:UXを最適化する
UX(ユーザーエクスペリエンス)デザインにおける「シナリオ(Scenario)」とは、ユーザーがある目的を達成するためにどのような状況・行動・心理でサービスやサイトを利用するかを物語として描く手法です。
🔹Scenario(シナリオ)とは何か
「シナリオ」という言葉の通り、UX設計ではユーザーの行動の流れをストーリー化します。
たとえば、AmazonのようなECサイトでは次のような流れを想定します。
朝の通勤中、ユーザーはスマホでイヤホンを検索。
→ レビューを比較しながら最も評価の高い商品を選ぶ。
→ 昼休みにカートに入れて決済。
→ 翌日、自宅に届いてSNSに感想を投稿。
このように、ユーザーがどの場面で・どんな動機で・どんな行動をとるかを可視化するのが「ユーザーシナリオ」です。
🔹シナリオの目的
目的 | 内容 |
---|---|
1. ユーザー体験の流れを具体化 | どんな行動・感情でサービスに触れるかを整理 |
2. UX改善のポイントを発見 | どの段階でストレスや離脱が起きるか分析 |
3. デザイナー・開発者・マーケター間の共通理解 | チーム全体で同じ「ユーザー体験像」を共有 |
4. 新しい体験の設計 | 未来の利用シーンを想定してUXを再構築 |
🔹シナリオの構成要素
要素 | 説明 |
---|---|
登場人物(ペルソナ) | 想定するユーザー。具体的な人物像を設定。 |
状況(コンテキスト) | どんな環境・時間帯・デバイスで利用しているか。 |
目的(ゴール) | ユーザーが達成したいこと。 |
行動 | 目的に向けてユーザーが取るステップ。 |
感情 | 各行動の中でユーザーが感じる心理変化。 |
🔹シナリオの例(ECサイトの場合)
項目 | 内容 |
---|---|
ペルソナ | 30代男性、会社員、通勤時間にスマホで買い物するタイプ |
状況 | 通勤電車の中でワイヤレスイヤホンを探している |
目的 | 通勤中でも快適に音楽を聴きたい |
行動 | 検索 → 比較 → レビュー確認 → 購入 → 配送通知確認 |
感情 | 「いいデザインだ」→「レビューも高評価」→「早く届くのが嬉しい」→「満足」 |
🔹シナリオで得られる効果
- UXの一貫性を高められる(画面遷移や導線をスムーズに)
- 感情曲線をデザインに反映できる(嬉しい・不安・満足など)
- チーム全員が同じ目線で改善提案を出せる
シナリオ=「ユーザー体験の物語」
UXデザインにおけるシナリオは、数字では見えない人の行動と感情を可視化する設計図です。
ペルソナで“誰”を明確にし、カスタマージャーニーで“流れ”を見える化し、シナリオで“リアルな体験”を描くことで、ユーザー中心のUXが完成します。
ECサイト(例:Amazon)を例に挙げると、以下のように整理できます。
ECサイトにおけるユーザーシナリオ例
状況 | ユーザーの目的 | 行動 | 期待する体験 | 改善すべきUX要素 |
---|---|---|---|---|
通勤中のスマホ操作 | 欲しい商品を探す | 検索バーで商品名入力 | 素早く見つかる | 検索候補・履歴機能 |
レビュー閲覧 | 商品の信頼性を確認 | 評価・コメントを見る | 客観的に判断できる | 評価フィルター、画像レビュー |
カート追加 | 後で購入したい | カートに保存 | 再訪時も維持 | アカウント連携・保存機能 |
購入 | すぐに買いたい | ワンクリック購入 | ストレスなく決済 | シンプルなUI・自動配送設定 |
受取後 | 満足を共有 | SNSで投稿 | 共感や信頼が広がる | シェアボタン、クーポン誘導 |
ユーザーシナリオを描くことで、「どんな場面で、何を求めているのか」をストーリーとして可視化でき、UXの改善点を具体的に見つけることができます。
UXをつくり出す5つのポイント
- ユーザーストーリーを作る
→ 行動や心理を「物語」として設計する。 - 興味を作る
→ 見た瞬間に「もっと知りたい」と思わせるデザインを。 - 興味を持続させる
→ アニメーション・導線・UIの一貫性で体験をつなぐ。 - 本能を利用する
→ クリックしたくなるボタン、スワイプしたくなる動きを設計。 - ポジティブな心理状態を作る
→ 成功体験を小さく積み重ねるUXを設計する。
まとめ:UXは“見える化”から始まる
UXデザインは「感覚」ではなく「構造的な設計」です。
ペルソナでユーザーを理解し、カスタマージャーニーマップで体験を描き、ユーザーシナリオで実際の流れを最適化する。
これらを組み合わせることで、ユーザーが心地よくゴールにたどり着けるWeb体験が生まれます。
補足記事
先ほど作ったペルソナから問題点や思考を抽出するという話だけじゃわからないよという人用に補足記事です。
ペイン(Pain)「痛み」や「不満」
1. 鍋セットの価格が高いため、購入をためらっていることからくる経済的なストレス。
2. 自分の予算内で満足できる品質の鍋セットを見つけることができない不安。
3. 様々な鍋セットの情報が氾濫している中で、どれが本当に自分に合ったものか選べない混乱。
4. 購入後のメンテナンスやお手入れについての不安から、選ぶ決断ができないこと。
5. 購入に対する後悔や失敗が恐れ、そのために行動ができないという心理的な障壁。
ゲイン(Gain)ユーザーの「得られる価値」や「喜び」
1. 高品質な鍋セットを手に入れることで、料理の技術向上や新しいレシピに挑戦できる楽しさを感じることができる。
2. 友人を招いてのホームパーティーで、自分の料理を披露し、好評を得ることで自己満足が得られる。
3. サステナブルでエコフレンドリーな素材の鍋を選ぶことで、環境保護に寄与しているという満足感が得られる。
4. 購入した鍋セットを使うことで、日常の料理が簡単に美味しく作れるようになり、時間の節約ができる。
5. 鍋のセットを通じて、料理仲間との絆を深めたり、新たなコミュニティを築いたりすることができ、社交的な楽しさが得られる。
課題が発生している背景
1. 収入制約: 立花綾乃さんは新卒で営業職として働いているため、年収が約350万円と限られており、高価な鍋セットの購入に対して強い価格感度を持っている。
2. 一人暮らしの課題: 一人暮らしをしているため、鍋を使用する頻度や量が限られており、大きなセットに投資することが本当に必要なのか悩んでいる。
3. 高品質へのこだわり: 料理に対するこだわりが強く、特にホームパーティーを楽しむための質の高い鍋を探している。しかし、コストパフォーマンスも重視しており、価格と品質のバランスが重要視される。
4. 環境意識: サステナブルな生活に興味があり、エコフレンドリーな製品を好むため、購入する鍋セットが環境に優しい材料で作られていることや、長持ちするかどうかも考慮している。
5. 購入前の調査時間の制約: プロフェッショナルとして働く忙しさから、時間に余裕がないため、オンラインでのレビューや比較サイトを通じて情報収集を行い、決断を下すまでに時間をかけることが難しい。
現在の代替方法
1. オンラインの鍋セットのレビューや評価を調べ、他のユーザーの体験を参考にしている
2. 友人や同僚に鍋セットの推薦を依頼し、実際に使っている人から意見を聞いている
3. 知人から借りた鍋を試し、満足できた場合にはその後に購入を検討している
4. セールやキャンペーンを利用し、値段が下がるのを待ちながら購入を保留している
5. 手作りだしやスープを使用した「シェア鍋」を友人たちと一緒に楽しむことで、鍋セットの必要性を感じずに済むようにしている
ペルソナが解決したいジョブ
1. 高コストパフォーマンスの商品を見つけるための情報収集を効率的に行いたい。
2. 鍋セットの実際の使用感を、レビューや体験談を通じて事前に確認したい。
3. 購入前に、製品のデモや試用ができる機会を持ちたい。
4. 鍋セットのメンテナンスや使用方法が簡単であることを確認するための説明やサポートが欲しい。
5. サステナブルな選択肢やエコフレンドリーな製品に関する情報を得たい。
より深い状況理解のために聞くべき質問とペルソナの回答
1. 鍋のセットを選ぶ際、特に重視されている機能や特徴は何でしょうか?
立花綾乃:そうですね、やっぱり使い勝手が良いことが一番大事です。あと、見た目もおしゃれで、友人を招いたときに自慢できるようなデザインがいいですね。それと、軽くてお手入れが簡単だと助かります。
2. 予算は具体的にどのくらいを考えていらっしゃいますか?
立花綾乃:予算はできれば3万円以内に抑えたいと思っています。やっぱり高いものを買って失敗したくないので、コストパフォーマンスを重視しているんです。
3. 購入を決定する際の一番の決め手はどのようなポイントですか?
立花綾乃:やっぱりレビューや口コミが重要ですね。SNSやブログでの評価を見ることが多いです。実際に使っている人の意見を参考にして、信頼できる情報を元に決めたいです。
4. 鍋料理を楽しむ場面や頻度について教えていただけますか?
立花綾乃:友人を招いてのホームパーティーが好きなので、特に冬場は鍋料理を頻繁に作ります。月に2回くらいは友達を呼んでワイワイしながら鍋を囲むことが多いですね。
5. これまでに使用された鍋のセットで特に気に入ったものや、不満だった点がありましたら教えてください。
立花綾乃:以前に使ってた鍋は、熱伝導が良かったので調理がしやすかったんですが、重くて持ち運びやすさが不満でした。また、洗うのが大変だった記憶があります。軽量で手入れが楽なものを優先したいですね。
状況理解のためにインタビューすべき内容とペルソナの回答
1. 鍋のセットを選ぶ際に、最も重視しているポイントは何ですか?
– 私は価格とコストパフォーマンスを特に重視していますね。だって、奮発して買ったのに使えなかったら残念ですから。あと、デザインやサイズも重要ですね。ホームパーティーの時に友達が来るので、みんなが楽しめるようなものが理想です。
2. これまでに鍋セットを購入する際の失敗談や後悔したことはありますか?
– 前に買った鍋セットは安かったんですが、1回使ったら底が焦げ付いてしまって、それ以降全然使っていません。見た目は可愛かったんですけど、機能が伴ってなかったということですね。本当に良いものを選ばないと、結局無駄にお金を使ってしまうのが悩みです。
3. 実際に購入を決める際に、どのような情報源を参考にしますか?
– 主にSNSやブログでのレビューを参考にしますね。特に友人やフォロワーの口コミが信頼できるので重視しています。また、商品の詳細を説明している動画とかがあれば、実際に使ったときのイメージが湧きやすいです。
4. 鍋のセットに求める機能や特長は何でしょうか?
– お手入れのしやすさは絶対条件です!特に、洗いやすい素材であることと、焦げ付きにくいコーティングが欲しいです。あと、熱伝導の良さも料理の仕上がりに影響するので、そこも重要ですね。
5. 購入後に、どのように鍋のセットを活用したいと思っていますか?
– 家で友達を招いて鍋パーティーを開いたり、アジア料理を試したりしたいです。特に、みんなとワイワイ楽しみながら料理をする時間が好きなので、その時間を豊かにするための道具として活用したいですね。
刺さりそうなセールスワード
1. 「プロのシェフが選ぶ鍋セット!自宅で本格派の味を楽しもう」
2. 「コストパフォーマンス最高!品質を維持しつつ、お財布にも優しい」
3. 「お手入れ簡単!忙しいあなたにぴったりのストレスフリー設計」
4. 「友人を驚かせる!魅力的なデザインで、ホームパーティーを華やかに演出」
5. 「エコでサステナブル!環境に優しい素材だから、安心して使える」
とまあ、こんな感じで悩みや解決策などを講じながら進めていくと良いと思います。