素材選びでデザインは決まる|“伝わる図解”を作るためのイラスト・アイコン選定完全ガイド

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デザインは素材選びで決まる

目次

◆ はじめに

「図解を作るとき、どんな素材を使うべきか?」
これは、デザイン初心者だけでなく経験者でもつまずきやすいテーマです。

素材サイトは山ほどあり、可愛いイラストや魅力的なアイコンもたくさん並んでいます。
しかし、イラストは“使えば良い”わけではありません。

むしろ、選び方を間違えると情報伝達の邪魔になることすらあります。

「親しみやすくしたい」
「温かい印象にしたい」
といった理由で女の子のイラストを入れたつもりが、読者の認知を混乱させてしまう例は意外と多いのです。

この記事では、初心者でも迷わず素材を選べるように、
イラスト・アイコン・図形の選び方を、プロのWebデザイナー目線で体系的にまとめました。

第1章|なぜ素材選びが「デザインの成否」を決めるのか

 デザインとは“情報の翻訳作業”

デザインの本質は「情報を視覚的に翻訳すること」です。
にもかかわらず、

  • 可愛いから
  • 見栄えがいいから
  • なんとなく入れてみたくて
    という理由でイラストを入れると、翻訳が破綻する=意味が伝わらないという事態が起きます。

 認知負荷が一気に跳ね上がる

人は「画像・イラスト」を見た瞬間、0.1秒で判断しようとします。
ここで“意味が一致していないイラスト”を見ると、脳が「?」と混乱します。

たとえば、
「職場の男女比」を説明するチャートに、やたらファンシーな女の子キャラを入れると
ユーザーの頭は“可愛い女の子”に持っていかれ、本来の意図が読まれなくなる。

つまり、素材の選び方を誤ると情報の価値そのものが落ちるということです。

第2章|言葉を明確にイメージしよう(素材選びの核心)

素材選びの9割は“言葉のイメージ”で決まります。

 「女性」と言っても何十種類もある

  • 大学生の女性
  • スーツ姿の女性
  • 介護職の女性
  • 主婦の女性
  • 医療現場の女性
  • ビジネスパーソンの女性
  • 幼稚園の先生
  • ナチュラル系ファッション
  • ギャル系
  • ゆるふわ系

など、「女性」だけでも膨大なバリエーションがあります。

NG例

「女子トイレの説明」にファッション誌のような女性キャラクターを使う。

→ 利用者は「なんか違う」と感じ、内容に集中できない。

OK例

無機質な“トイレマーク風”アイコンを使う。

→ 必要十分であり、認知負荷が低い。

 イラストで表現できないなら、図形のほうが強い

読者が誤解しそう、意味がズレる、抽象度が高すぎる――
こうした場合は、無理にイラストを使わず丸・四角・矢印の図形で十分です。

特に説明系コンテンツでは、「伝わること」>「見た目の可愛さ」が絶対基準になります。

第3章|テイストを統一することが“プロの仕事”

素材選びでもっとも初心者が陥りやすいミスが「いろんな素材サイトから寄せ集める」こと。

  • 線の太さが違う
  • 色使いが違う
  • キャラの頭身が違う
  • タッチが違う
  • 背景の有無が違う

たった1つの違いがノイズとなり、説明の読みやすさを大きく損ないます。

 1つのサイトに統一するメリット

特におすすめは icooon mono のような単色ラインアイコン。

  • 種類が多い
  • 認知の邪魔をしない
  • 情報の説明と相性がいい
  • いらすとやほど“あ、あの絵だ”感がない
  • 図解との親和性が高い

“説明したいこと”が前に出る素材は、デザインとして非常に優秀です。

第4章|色は「白・黒+1アクセント」で十分強い

プロの資料でも
白・黒(グレー)+アクセント1色
がほぼ鉄則となっています。

理由はシンプルで、色が増えるほどバランスが難しくなるから。

 三色ルールのメリット

  • 認知負荷が低い
  • 伝えたい場所が明確になる
  • 情報の優先順位がつけやすい
  • 図解の統一感が出る
  • 初心者でも崩れにくい

 イラストは“アート”であって、説明向きではない

もちろん、イラストが悪いわけではありません。
ただし、多くの人が「あの絵だ」と認識してしまうため、情報よりもイラストの方に注意が向いてしまうデメリットがあります。

さらに、

  • 色数が多い
  • トーンが統一されていない
  • 認知フレームが“〇〇っぽい”など別方向に引っ張られる

という特徴があるため、説明資料には不向きなケースがあります。

第5章|読者を迷わせない“素材選びの実践ステップ”

初心者でも迷わないように、
今日から使えるチェックリストとしてまとめました。

 ★ ステップ1:伝えたい言葉を1つだけ決める

「顧客」「女性」「判断」「リスク」など、主語となる概念を明確化。

 ★ ステップ2:属性を言語化する

「仕事中の女性」「ショップ店員」「学生」など、状況を細かく定義。

 ★ ステップ3:テイストを1つに固定する

1つのサイトだけ使う、色を統一するなど。

 ★ ステップ4:アクセントカラーを決める

アクセントカラーを1色だけにすることで強調ポイントがわかりやすくなる。

 ★ ステップ5:最後に“図形ではダメか?”を考える

読者にとって混乱のない方法を選ぶ。

第6章|図形だけで十分伝わるケースは本当に多い

Googleスライド、PowerPointの図形だけでほとんどの説明図は成立します。

  • フロー図
  • ツリー図
  • マトリクス図
  • 関係図
  • 比較表

実際、企業の資料でも図形だけの図解が最も多いほどです。
むしろ、情報がクリアに整理されていれば、イラストは必要ありません。

第7章|イラストとの付き合い方(上手な使い方)

イラストを完全に避ける必要はありませんが、使うなら次の点を意識すると破綻を避けられます。

 イラストが向いている場面

  • 感情表現が必要な記事
  • エンタメ性の強いブログ
  • 親しみやすさを最優先にしたいとき
  • カジュアルなSNS投稿

 イラストが不向きな場面

  • 説明系の図解
  • 企業向け資料
  • UX/UIの説明
  • 専門性が高い記事
  • 色数を絞りたいデザイン

ただし、明確に意図があるなら問題はありません。
大事なのは「素材の存在が情報を邪魔していないか」です。

第8章|プロのデザイナーは素材選びをどうしているのか

現場のデザイナーは、以下の順で考えます。

(1)文章を読み、何を伝えたいかを把握

(2)素材を探す前に“構造”を決める

(3)図形で表現できるところは図形にする

(4)必要な部分だけアイコンを足す

(5)テイストと色を統一する

(6)完成後に“この素材は本当に必要?”と自問する

このプロセスを踏めば、
素材が情報より目立ってしまう事故はほぼなくなります。

まとめ|イラストは“飾り”ではなく、情報を届けるための道具

素材選びで最も大切なのは、「情報の邪魔をしていないか?」という視点です。

イラストは便利で華やかですが、正しく使わなければ逆に内容が届きません。

  • 言葉を明確にイメージする
  • テイストを統一する
  • 色は白・黒+アクセント1色
  • 無理な場合は図形で十分
  • いらすとやは意図を持って使う

こういった原則を守れば、初心者でも“伝わる図解”を作ることができます。

◆ 補足|初心者が避けるべき素材サイトの特徴3選

 1. 広告が多すぎるサイト

必要な素材を探す前に心が折れる。

トーンもバラバラ。

 2. 作者が混在しているコレクション型サイト

統一感が出ないため、初心者には難易度が高い。

 3. 色・陰影・太さが統一されていない素材が混ざるサイト

見た目がバラバラになり、情報より素材が目立つ。

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